Lattafa Khamrah レビュー|煮詰めた甘さ、冬の夜
アラビア語で酒を意味するとされる名を持つ、Lattafa Khamrah。金曜の夕方に1プッシュして、翌朝まで付き合ってみた。シナモンとデーツの濃い甘さの移ろいを、弱点も含めて正直に綴る。
アラビア語で酒を意味する、とされる名前を持つ香水だ。Lattafa Khamrah。ドバイ発のこの一本は、ここ数年、世界中のレビューを賑わせ続けている。何がそんなに人を語らせるのか。金曜の夕方に1プッシュして、翌朝まで付き合ってみるのが、いちばん早い。
夕方6時。つけた瞬間、スパイスが立つ
シナモンとナツメグが立ち上がる。甘い。でも、砂糖の甘さではない。デーツ——なつめやし——を煮詰めたような、濃くて茶色い甘さだ。中東の菓子を思わせる、と言えば伝わるだろうか。ベルガモットがわずかな光を差し、すぐにデーツとプラリネの厚い甘さが続く。甘ったるさの一歩手前で、スパイスが角を立てて踏みとどまる。この危うい均衡が、Khamrahの正体だ。
夜8時。樹脂の甘さに沈んでいく
最初の30分は、押しが強い。香りの広がり——シラージュと呼ばれる——も相当なもので、同じ部屋に人がいれば、まず気づかれる。そこから2時間ほどかけて、バニラとトンカビーン、ベンゾインの樹脂めいた甘さへゆっくり沈んでいく。チュベローズが奥でかすかに白い花を匂わせるが、主役の座は奪わない。夕食の席に着く頃には、最初の派手さが嘘のように、肌の近くで穏やかに香っている。
翌朝。ニットの襟元に、残り火
肌の上で8時間は平気で香る。そして翌朝、昨夜のニットを手に取ると、襟元からまだ甘くスパイシーな残り香が立つ。服に移った香りは数日残る。焚き火の残り火のようなこの終盤が、いちばん好きだという人も多い。よくKilian Angels' Shareと比較される香りでもある——コニャック樽を思わせる数万円のニッチと方向が近い、という文脈だ。実際に並べると違いはあるが、正直、そこはあまり重要ではないと思っている。似ているから買うのではなく、良いから買う。それで十分な香りだ。
使いどころと、向かない人
強い。2プッシュで一日もつ。3プッシュは、日本の満員電車では香害になりかねない。1プッシュから始めるのが堅実だ。季節は秋冬。気温が下がるほど、この甘さは品よく沈んでいく。逆に夏は、湿度の中で甘さが膨張して重さだけが前に出るから、やめておいたほうがいい。甘い香りが好きなら、まず外さない。ユニセックスとされていて、実際、選ぶのは性別ではなく甘さへの耐性のほうだ。お菓子のような香りが苦手な人と、オフィスの昼には、はっきり向かない。プライベートの夜と冬の外出。守備範囲は狭いが、その範囲では強い。
日本での入手
国内の正規取扱いはほとんどなく、入手は並行輸入が基本になる。Amazonや楽天で、2026年時点の目安として100mlで5,000円前後。数万円のニッチ香水が霞むほどの満足感が、その値段で手に入る。琥珀色の液体に、ガラスの王冠のようなキャップ。ボトルも値段を疑うほど凝っていて、棚に置くと妙な存在感がある。人気ゆえに怪しい出品も混ざるので、店の評価だけは確かめてから買いたい。アラビアン香水というジャンル自体が気になってきたら、アラビアン香水入門も覗いてみてほしい。
砂糖菓子ではなく、煮詰めた果実の甘さ。Khamrahが自分の方角かどうか迷うなら、香水診断で好みの輪郭を確かめてからでも遅くない。冬の夜の一本を探しているなら、候補から外す理由は見つからないはずだ。