年間売上3億本。Lattafaという名前を、まだ知らないほうが珍しくなってきた
UAEの香水ブランドが、ヨーロッパとアメリカの香水市場を本気で揺さぶっている。Lattafa Perfumes(ラッタファ)。2020年代に入ってTikTokとYouTubeで火がつき、#PerfumeTokでは累計数億回再生。「この値段でこの香り、意味がわからない」という困惑まじりの称賛が、国境を越えて広がった。
中東には古くからウードやムスクを軸にした香りの文化がある。Lattafaはその伝統を下敷きにしつつ、西洋のニッチ香水が開拓した方向にも平然と踏み込んでいく。しかも価格は3,500〜7,500円台。高級メゾンの5分の1以下だ。
なぜここまで売れているのか
ニッチ香水が高くなりすぎた
Tom Fordで3万〜5万円、Kilianで約4万円、MFKで約3.8万円。ニッチ香水の価格はここ数年、明らかに上がっている。香水に興味を持った人が最初の一本に4万円を出すのは現実的ではない。その隙間に、Lattafaがちょうど入り込んだ。
SNSの口コミが異常な速度で回った
海外の香水系TikTokerが「この7,000円の香水、4万円のKilianとほぼ同じなんだけど」と投稿する。視聴者は半信半疑で買い、実際に嗅いで驚き、また投稿する。この連鎖が止まらなかった。特にKhamrahとYaraの拡散力は桁違いだった。
安いだけでは説明できない品質
安さだけならすぐ飽きられる。Lattafaが支持され続けているのは、値段に甘えていないからだ。持続時間は6〜10時間、シルージュ(香りの拡散)も十分。世界中のレビュアーが「この価格帯では圧倒的」と言い切る。それは大げさではない。
代表作5本を並べてみる
Khamrah(カムラ)--- 約7,292円
Lattafaを世界に知らしめた一本。シナモン、デーツ、バニラが折り重なる、温かく深い香り。Kilian Angels' Shareとの類似が指摘されるが、Khamrahのほうがスパイスの輪郭がくっきりしていて、別の着地点にたどり着く。甘いが、だらしなくない。
おすすめシーン:秋冬の夜、デート、特別な日。
こんな人に:甘い香りが好きで、スパイシーなアクセントも欲しい人。
Yara(ヤラ)--- 約3,800円
TikTokで最もバズったアラビアン香水、と言って差し支えない。トロピカルフルーツとバニラの甘くかわいい構成。アラビアンと聞いて身構える必要はまったくない。むしろ親しみやすさが武器だ。3,800円という値段も、試しやすさに拍車をかけている。
おすすめシーン:デイリーユース、友人との食事、カジュアルなお出かけ。
こんな人に:フルーティで甘い香りが好き、アラビアン香水を初めて試す人。
Asad(アサド)--- 約5,100円
アラビア語で「ライオン」。名前負けしていない。ブラックペッパー、コーヒー、アンバーウッドの重厚な構成で、つけた瞬間の押し出しが強い。Dior Sauvage Elixirとの比較をよく見かける。少量で十分に存在感が出るので、つけすぎには注意したい。
おすすめシーン:秋冬、ビジネスシーン、夜のお出かけ。
こんな人に:パワフルで重厚な香りが好きな人。Sauvageにもう少し深みが欲しいと感じている人。
Oud for Glory(ウード フォー グローリー)--- 約5,200円
Initio Oud for Greatnessとの類似で評価が高い。スモーキーなウードにサフランが絡む、中東の香水文化をそのまま液体にしたような一本。好みは分かれる。だが刺さる人には深く刺さる。一度ハマると、他のウード香水が物足りなくなるかもしれない。
おすすめシーン:特別な日、夜のイベント。
こんな人に:ウード(沈香)の世界に足を踏み入れたい人。エキゾチックな香りに惹かれる人。
Fakhar(ファカール)--- 約3,500円
5本の中では一番軽い。ミントとバニラの爽快感があり、Versace Erosに通じる構成。日本の春夏にはこれが一番使いやすいと思う。3,500円なので気負わず試せるし、Lattafaの入口としても優秀。
おすすめシーン:春夏、カジュアル、スポーツ後のリフレッシュ。
こんな人に:爽やかさと甘さのバランスを求める人。コスパ重視の人。
日本での買い方と注意点
Amazon.co.jp
最も手軽な入手経路。Lattafaの主要ラインナップはほぼ揃っている。価格帯は3,500〜7,500円台で、Prime対応の商品も多い。
楽天市場
取り扱いが増えてきている。ポイント還元込みで考えると、Amazonより得になることもある。
買うときの注意
- 販売元の評価を確認する。レビュー数と評価の高い出品者を選ぶのが基本。
- 異常に安い出品は避ける。人気商品には偽物が紛れることがある。
- 並行輸入品が前提。日本に正規代理店はないため、すべて並行輸入品になる。
- ロットによる香りの微差はありえる。生産バッチで若干香りが異なることがあるが、これは高級ブランドでも起きること。
もう一歩踏み込むなら
本家と並べて嗅いでみる
余裕があれば、類似元とされるニッチ香水と嗅ぎ比べてみると面白い。「ここが似ている」「ここが違う」がわかると、自分の鼻の解像度が上がる。香水の楽しみ方が一段変わる瞬間だ。
季節で使い分ける
KhamrahやOud for Gloryは秋冬向き、FakharやYaraは春夏向き。Khamrahを真夏の満員電車でつけるのは、本人にとっても周囲にとっても幸福な結果にはならない。
他のアラビアンブランドも覗いてみる
Lattafaが気に入ったなら、Armaf、Afnan、Maison Alhambraあたりにも手を伸ばしてみてほしい。アラビアン香水という世界の奥行きに驚くはずだ。
Lattafaは2024年にパリで初のポップアップストアを開いた。中東ローカルだったブランドが、香水の都に乗り込んでいる。数年後には百貨店の棚に並んでいても不思議ではない。そのとき「7,000円であの香りが買えた時代」を懐かしく思うのかもしれないし、案外値段は変わらないのかもしれない。どちらに転ぶかは、まだ誰にもわからない。