「シヤージュ」という名前

Sillage(シヤージュ)。香水用語で「香りの軌跡」を意味する。自分が通った後に残る香りの尾。香水好きには馴染みのある言葉だが、それを商品名にするのは大胆だ。「俺が通った後にはいい香りが残る」と宣言しているようなものだから。

名前負けしているか。していない。

香りの構造

トップ:ベルガモット、マンダリン、グリーンティー
ミドル:ペティグレン、ブラックカラント
ベース:ムスク、サンダルウッド、アンバー

CDNIMやKhamrahとは完全に別世界。スプレーした瞬間、ベルガモットとグリーンティーの爽やかな透明感が広がる。お茶の葉を揉んだ時の、あの清々しい香りに近い。フルーツの甘さではなく、お茶の渋みと柑橘の酸味。潔いほどクリーンだ。

ミドルのペティグレンが入ると、ほんのりビターなグリーン感が加わる。ベースはムスクとサンダルウッドの穏やかな着地。派手さはない。でも「派手さがないこと」がこの香水の美点だ。

Silver Mountain Waterとの比較

Creed Silver Mountain Water。クリーンでフレッシュなシトラスティー系として、長年支持されてきた名香だ。

Sillageは方向性が近い。グリーンティーのクリーンさ、シトラスの爽やかさ、全体のトーンが似ている。ただし、Silver Mountain Waterにはミルキーなソフトさがあり、Sillageのほうがややドライでシャープ。Silver Mountain Waterが「霧の中の山」なら、Sillageは「晴れた朝の山」。似ているが、空気感が違う。

持続は6時間前後。Silver Mountain Waterも持続が短めの香水なので、ここは互角に近い。

日本で最も使いやすいアラビアン

断言してもいい。Sillageはアラビアン香水の中で、日本の日常に最も溶け込みやすい一本だ。

ウードもスパイスも甘さもない。シトラスとティーのクリーンな構成。オフィスで使える。電車でも浮かない。春夏に最高で、秋冬でも使える。ユニセックスだから男女問わない。嫌う人を想像するのが難しい。

「アラビアン香水って甘くて重いんでしょ?」という先入観を持っている人にこそ嗅いでほしい。その固定観念が静かに崩壊する。

手頃な透明感

Silver Mountain Waterの何分の一かの値段で、方向性の近いクリーンな香りが手に入る。この事実だけで十分に購入動機になる。

ボトルは白を基調としたシンプルなデザイン。中身の方向性と合っている。重厚なアラビアンのボトルとは一線を画す軽やかさ。

弱点を言うなら

持続が6時間。クリーンな香りの宿命だが、午後には薄れる。アトマイザーに移して持ち歩き、昼すぎに軽く足すのが現実的な運用だ。

それから、存在感は控えめ。KhamrahやCDNIMのような「つけてます感」はない。「いい匂いがするけど何だろう」で終わるタイプ。それを長所と見るか短所と見るかは、使う人次第だ。

個人的には、オフィス用として一本持っておくと重宝する。この価格でこの汎用性は、素直にありがたい。

あわせて読みたい