オフィスに香水は、ありかなしか
「職場に香水はNG」という空気がある。日本ではとくに。でも実際のところ、つけ方と選び方さえ間違えなければ、香水は静かに味方になる。密室で人の印象を左右するのは、見た目の次に香りだったりする。
密室のルール
EDTなら2プッシュ。EDPなら1プッシュ。これが上限だと思っていい。
つける場所は手首の内側か、ウエスト周りの服の内側。首筋は周囲に届きやすいのでオフィスでは避ける。あまり知られていない方法として、足首や膝の裏に1プッシュという手もある。体温でゆっくり立ち上がるから、自然と控えめになる。
自分でかすかに感じる程度が、他人にはちょうどいい。不安になるくらいで正解。
グルマン系(チョコレートやキャラメルが前面に出るタイプ)、拡散力が強すぎるもの、ParfumやExtrait濃度——このあたりは密室で重くなるリスクが高い。避けたほうが無難だ。
選ぶ基準はシンプル
「いい匂いがする」とは思われても「香水つけてるな」とは思われない。その境界線にあるもの。シトラス、グリーン、ライトフローラルのようなクリーン系で、濃度はEDTか軽めのEDP。拡散力は控えめ。このあたりを押さえておけば、まず外さない。
女性向け5本
1. Jo Malone English Pear & Freesia — 約10,560円
熟した洋梨とフリージアの上品な甘さ。EDCだから拡散力は穏やかで、持続は4時間ほど。午前中につければランチ頃にはほぼ落ち着く。「いい匂いの人」と「香水つけてる人」の境界線を絶妙に歩く一本。控えめすぎると感じるかもしれないが、オフィスではそれが武器になる。
濃度:EDC | 拡散力:★★☆☆☆ | 季節:通年
2. Chloé Chloé EDP — 約12,100円
パウダリーローズ。フェミニンだが押しつけがましくない。日本でこれだけ支持されているのは「ちょうどいい上品さ」に尽きる。EDPだが、1プッシュならオフィスでも全く問題ない。むしろ1プッシュでこそ真価が出る香水だと思う。
濃度:EDP | 拡散力:★★★☆☆(1プッシュ推奨) | 季節:通年
3. Guerlain Aqua Allegoria Mandarine Basilic — 約10,450円
マンダリンとバジル。書くと料理みたいだが、実際はハーブティーに近い透明感がある。Aqua Allegoriaシリーズは全体的にオフィス向きだが、このマンダリンバジルはその中でも最もさりげない。春夏のオフィスにとくに映える。
濃度:EDT | 拡散力:★★☆☆☆ | 季節:春夏
4. Lancôme Idôle EDP — 約12,100円
ローズとジャスミンのクリーンでモダンなフローラル。「清潔感のある花」という、言葉にすると当たり前のことを本当にそのまま実現している。若い世代に人気があるが、年齢を選ばないのはクリーンな香りの共通点だろう。
濃度:EDP | 拡散力:★★☆☆☆ | 季節:通年
5. Hermès Un Jardin sur le Nil — 約11,550円
グリーンマンゴーとロータスのみずみずしさ。エルメスの「庭園シリーズ」の中でも最も軽く、最も爽やか。ユニセックスで使えるので、周囲に香水の印象を与えにくい。「何の香りだろう」と思わせて、でもそれ以上追及されない。その距離感がオフィスにはちょうどいい。
濃度:EDT | 拡散力:★★☆☆☆ | 季節:春夏
男性向け5本
6. Chanel Bleu de Chanel EDP — 約15,400円
ウッディアロマティックの品の良さ。スーツとの相性は言うまでもない。20代でも50代でも違和感がないが、逆に言えば没個性ではある。ただ、オフィスにおいて没個性は褒め言葉だ。1プッシュで十分。
濃度:EDP | 拡散力:★★★☆☆(1プッシュ推奨) | 季節:通年
7. Hermès Terre d'Hermès EDP — 約15,400円
オレンジとベチバーが織りなす、知的で大地のような香り。「この人、いい香りがするな」とは思われるが、何の香水かは当てられない——そういうタイプの一本。40代以上の男性がつけると、落ち着きと品格がさらに際立つ。
濃度:EDP | 拡散力:★★★☆☆(1プッシュ推奨) | 季節:通年
8. Jo Malone Wood Sage & Sea Salt — 約10,560円
ソルティでミネラルなウッディ。海風みたいな自然さで、「香水をつけている」感がほぼゼロに近い。EDCなので拡散力も穏やか。香水に慣れていない男性が最初の一本に選ぶなら、個人的にはこれを推す。つけている本人すら忘れるくらいの自然さが、オフィスでは案外最強だったりする。
濃度:EDC | 拡散力:★☆☆☆☆ | 季節:春夏
9. Dolce & Gabbana Light Blue EDT — 約8,800円
レモンとアップルの地中海フレッシュ。クリーンで爽やか、嫌う人がまずいない。オフィス香水としての安全度は最高クラスだろう。価格も手頃で、毎日気兼ねなく使える。夏のオフィスにはとくに頼もしい存在。
濃度:EDT | 拡散力:★★☆☆☆ | 季節:春夏
10. Calvin Klein CK One EDT — 約4,400円
シトラスとムスクのシンプルなクリーン。発売から30年以上経つが、全く古びていない。「清潔感のある香り」というジャンルの原点はここにある。ユニセックスで使えて、4,400円。一本持っておいて損はない。
濃度:EDT | 拡散力:★★☆☆☆ | 季節:通年
季節で入れ替えるだけで変わる
夏はシトラスやグリーン系——Light BlueやUn Jardin sur le Nilのような軽さ。冬はウッディやパウダリー系——Bleu de ChanelやChloé EDPの温かみ。衣替えと同じ感覚で、香りも入れ替えてみるといい。
EDTは午後には薄れる。ランチ後にお手洗いで手首に軽く1プッシュするだけで、午後のコンディションが変わる。デスクでスプレーするのは、やめておこう。同僚の鼻は意外と敏感だ。
肌につけたくない日もある。そんなときはハンカチや名刺入れの内側にワンプッシュ。直接肌につけるより拡散が穏やかで、自分だけがふと気づく程度。これはこれで贅沢な使い方だと思う。
オフィスの香水は、誰にも気づかれないくらいがちょうどいい。でも自分だけは知っている。その小さな余裕が、案外悪くない。