正直に言うと、最初の一本なんて何でもいい

身もふたもない話から始める。香水の最初の一本に「正解」は存在しない。どれだけレビューを読んでも、どれだけYouTubeを漁っても、最終的には自分の鼻で嗅いで「あ、好き」と思ったものが正解になる。それだけの話だ。

ただ、「何でもいい」と「何を選んでも同じ」はまったく違う。濃度、持続時間、香りの系統——知っておくと選びやすくなる基礎知識はある。そのうえで、男女別・予算別に10本を挙げてみた。どれも「最初の一本」として手堅い選択肢ばかりだ。

まず、濃度の話をしておく

香水売り場で「EDT」とか「EDP」とか書いてあるのを見て、何のことだかわからなかった記憶がある人は多いと思う。あれは香料の濃度を示している。

  • オーデコロン(EDC):香料濃度1〜5%。ふわっと香って1〜2時間で消える。Jo Maloneのコロンがこのあたり。
  • オードトワレ(EDT):濃度5〜15%。3〜5時間もつ。日常使いの定番。
  • オードパルファム(EDP):濃度15〜20%。5〜8時間持続。いま最も主流で、塗り直しの手間が少ない。
  • パルファム(Extrait):濃度20%超え。8時間以上。価格もそれなりに上がる。

初心者にはEDTかEDPをすすめる。EDTは軽くて失敗しにくく、EDPはコスパがいい。この記事の10本もほとんどがこの2つのどちらかだ。

つけ方だけ、ひとつ注意

手首の内側、首筋、耳の後ろ。脈打つ場所に1〜2プッシュ。それでいい。

ただし、つけた後に手首をゴシゴシこすり合わせるのだけはやめたほうがいい。香りの分子構造が壊れて、本来の香り立ちが変わってしまう。つけたら、そのまま放置。自分では「薄いかな」と感じるくらいが、他人にはちょうどいい。

女性におすすめの5本

1. L'Occitane チェリーブロッサム EDT — 約5,940円

桜の花の、透明感のある甘さ。ロクシタンは百貨店でもショッピングモールでも試せるから、「香水を買う」という行為自体のハードルが低い。軽い香りなのでつけすぎの事故も起きにくい。安全策と言えば安全策だが、安全策が悪いわけではない。

タイプ:フレッシュフローラル
シーン:オフィス、学校、日常使い
持続:約4時間

2. Versace Bright Crystal EDT — 約7,700円

ザクロとピオニーの華やかなフルーティフローラル。「いい匂いですね」と言われる頻度が異様に高い香水のひとつ。万人受けという言葉がこれほど似合う香りも珍しい。ピンクのクリスタルボトルは、置いてあるだけでちょっと嬉しくなる。

タイプ:フルーティフローラル
シーン:デート、友人との食事、お出かけ
持続:約5時間

3. Chloé Chloé EDP — 約12,100円

日本の女性から圧倒的な支持を受けているパウダリーローズ。フェミニンだけど押しつけがましくない、絶妙なバランス。百貨店のカウンターで嗅いだ瞬間に「これだ」となる人がかなり多い。「大人っぽい香り」を探しているなら、まず試す価値がある。

タイプ:パウダリーフローラル
シーン:オフィス、デート、冠婚葬祭
持続:約7時間

4. Dior Miss Dior EDP — 約16,000円

ピオニーとローズのロマンティックなフローラル。Diorの看板だけあって、「迷ったらこれ」という安定感がある。プレゼントで贈っても外さない。1万6千円という価格に見合うだけの安心感を買えると思えば、高くはない。

タイプ:フローラル
シーン:デート、特別な日、通年
持続:約7時間

5. Chanel Chance Eau Tendre EDT — 約15,400円

Chanelの中でもっとも親しみやすい一本。グレープフルーツとジャスミンのやわらかいフルーティフローラルで、シーンを選ばない。嫌味のない香りと「Chanelをつけている」という小さな満足感の両立。初めてのChanelとして、これ以上の候補を探すのはけっこう大変だと思う。

タイプ:フルーティフローラル
シーン:どんなシーンでも
持続:約6時間

男性におすすめの5本

6. Calvin Klein CK One EDT — 約4,400円

1994年発売。「ユニセックス香水」を大衆に広めた存在だ。シトラスとムスクのクリーンな香り。30年以上経っても古びない。4,400円で失敗のしようがない香水が手に入る。初めての一本としてこれ以上手堅い選択肢は思いつかない。

タイプ:シトラスフレッシュ
シーン:日常使い、オフィス、春夏
持続:約4時間

7. Versace Eros EDT — 約8,500円

ミントとバニラ。一見ちぐはぐな組み合わせが、なぜか完璧にまとまっている不思議な香水。世界で最も売れているメンズ香水のひとつ。華やかで存在感があるから、「香水をつけている実感」がほしい人には向いている。控えめな香りでは物足りないタイプの人にちょうどいい。

タイプ:アロマティックフレッシュ
シーン:デート、夜のお出かけ、パーティ
持続:約6時間

8. Dolce & Gabbana Light Blue EDT — 約8,800円

シチリアのレモンとアップルが作り出す地中海の空気感。夏に最強の一本と言い切っていい。「香水っぽさ」が苦手な人でもすんなり受け入れられるクリーンな爽やかさがある。真冬にはやや力不足だが、春から秋にかけては無敵に近い。

タイプ:シトラスアロマティック
シーン:春夏、カジュアル、スポーツ後
持続:約5時間

9. Chanel Bleu de Chanel EDP — 約15,400円

メンズ香水の「正解」とまで言われる一本。ウッディアロマティックの完璧なバランスで、ビジネスでもデートでも浮かない。20代がつけても50代がつけても違和感がない。面白みがないと言えばそうかもしれないが、面白みが必要な場面は人生において驚くほど少ない。

タイプ:ウッディアロマティック
シーン:どんなシーンでも
持続:約8時間

10. Dior Sauvage EDP — 約15,730円

世界売上No.1のメンズ香水。アンブロキサンを効かせたスパイシーでフレッシュな香りは、一度嗅いだら記憶に残る。それでいて「嫌い」と言う人が極端に少ない。そのバランス感覚が、売上1位という数字をそのまま説明している。

タイプ:スパイシーフレッシュ
シーン:どんなシーンでも
持続:約8時間

予算をもっと抑えたいなら、Dupe香水という手がある

ここまでの10本は、安くても4,000円台。もう少し気軽に試したいなら、Dupe(デュープ)香水を選ぶ手もある。有名ブランドの香調に似た香りを、手頃な価格で出しているアラビア系ブランドだ。

  • Versace Erosの雰囲気が気に入ったなら → Lattafa Fakhar(約3,500円)
  • 甘い系統に惹かれるなら → Lattafa Yara(約3,800円)
  • Dior Sauvageの方向性が好きなら → Lattafa Asad(約5,100円)

本家とまったく同じではないが、「この系統の香りが自分に合うかどうか」を確かめるには十分すぎるクオリティだ。気に入ったら本家に進めばいいし、Dupeのままで満足するならそれもいい。

一本買ったら、もうあなたは香水の人だ

最初の一本を手に入れると、不思議なことに二本目が気になりはじめる。季節で使い分けたくなる。気分で選びたくなる。気づけば棚に数本並んでいる。

とはいえ、最初の一本に何を選ぶかで人生は変わらない。変わるのは、朝の支度がほんの少し楽しくなるかどうか、くらいのこと。それだけでも十分だと、個人的には思っている。あまり気負わずに。