アラビア語で「ライオン」

名前を聞いた時点で、軽やかな香りではないだろうなと察しがつく。実際その通りだった。

スプレーした瞬間、ブラックペッパーの鋭い一撃。それも上品なタイプではなく、ゴリゴリの粗挽きペッパー。そこにタバコのスモーキーさが混ざり、数分後にはコーヒーの苦みとパイナップルの不思議な甘さが顔を出す。コーヒーとパイナップル。文字にすると意味不明だが、嗅ぐと成立している。

香りの構造

トップ:ブラックペッパー、タバコ
ミドル:コーヒー、パイナップル
ベース:アンバーウッド、ベンゾイン、バニラ、ドライフルーツ

パワフルの一言に尽きる。トップからベースまで一貫して「強い」。ただし乱暴ではない。ベースのアンバーウッドとバニラが全体を包み込んで、力強さの中にどこか温かい安心感がある。力自慢だけど根は優しい、みたいな香り。

持続は9時間超え。拡散力は4/5。2プッシュで十分すぎる存在感。

Sauvage Elixirとの距離

Dior Sauvage Elixirとよく比較される。方向性は確かに近い。スパイシーでダーク、ウッディで力強い。ただ、Asadのほうがコーヒーのビター感が強く、Sauvage Elixirのラベンダーとリコリスの滑らかさはない。

Sauvage Elixirが「スーツを着た野獣」なら、Asadは「革ジャンを着た野獣」。品の方向が違う。どちらが良いかではなく、どちらが自分のキャラクターに合うか。価格差を考えると、方向性の近い「力強さ」が圧倒的に手頃な価格で手に入る。

日本でどう使うか

問題はここだ。Asadはパワフルすぎる。日本のオフィスでは確実にアウト。満員電車は論外。使えるシーンは限られる。

秋冬の夜のお出かけ、デート、バーに行く時。気温が低いほうが重厚さが映える。1プッシュで十分。いや、本当に1プッシュで十分だ。つけすぎたら友人を失う覚悟がいる。

正直、日本のデイタイムにフルでつけると香害認定される可能性が高い。そこだけは繰り返し注意しておきたい。半プッシュ、あるいは空中にスプレーしてくぐる。この使い方でちょうどいい。

ボトルとコスパ

黒いボトルにライオンのエンブレム。見た目のインパクトは十分。重量感もある。安っぽさは感じない。

100mlでこの価格。持続力と拡散力を考えると、1プッシュ運用なら半年以上は余裕で持つ。コスパという観点では圧倒的だ。もはや「安い」を通り越して「減らない」が正しい。

向いている人

パワフルな香りが好きな人。自分の存在感を香りでも主張したい人。Sauvageに深みとワイルドさを足したい人。逆に、控えめな香りが好きな人は全力で避けたほうがいい。このライオンに中間はない。

手頃な価格で買える野獣。使いこなせるかどうかは、つける側の匙加減にかかっている。

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