レビュー

Lattafa Eclaire|夕方から翌朝までの甘い帯

焦げかけたキャラメルに熱いラテを垂らしたような、Lattafa Eclaireのグルマン。夕方つけてから翌朝まで、香りの移り変わりと生活の場面を並べて書いた。甘さの正体と、惜しい弱点まで。

金曜の夕方、手首にひと吹きして家を出る。コートのなかに甘い帯がひとつ立ち上がる。Lattafa Perfumes の Eclaire(エクレア)は、そういう香りだ。名前のとおり、菓子のような甘さを抱えた一本。アラブ首長国連邦のブランドが手がけるEDPで、参考価格は約6,000円。手の届く値段で、想像よりずっと贅沢な顔をする。

18時、焦げかけたキャラメルが立ち上がる

つけた直後、まず来るのはキャラメルとミルクとシュガー。それも、きれいに整ったキャラメルではない。少しだけ火が入りすぎて、縁が焦げかけたような、香ばしさを含んだ甘さ。そこにミルクが混ざるから、温度がある。

コーヒーは一滴も入っていないのに、多くの人がこれを「カプチーノ的」と評するのがおもしろい。熱いラテをキャラメルに垂らした、あの湯気の立つ感じ。冬の夕方、駅までの道で吐く白い息と、不思議とよく似合う。最初の数十分が、いちばん華やかで、いちばんよく香る時間だ。

21時、蜂蜜と白い花が顔を出す

食事を終えるころ、甘さの輪郭が少しやわらぐ。ミドルに置かれたハニーとホワイトフラワーが、キャラメルの後ろからそっと顔を出す。砂糖の角が取れて、蜜のとろみと花の湿り気が混ざる。ここで香りがぐっと大人びる。

ユニセックスと位置づけられているのも、この段階を嗅ぐと納得がいく。甘いのに、花がほんの少し冷たさを差し込むから、甘ったるさで窒息しない。デートの席で、相手がふと近づいたときに気づく程度の距離感。声高に主張はしないが、確かにそこにいる。Lattafaというブランドが、安価なのに高見えすると言われる理由が、この移り変わりにある。

翌朝、枕に残るバニラとプラリネ

ベースはバニラ、プラリネ、ムスク。夜が更けるにつれ、香りは肌に近いところへ降りていく。ナッツを砂糖で固めたプラリネのこっくりした甘さと、バニラのまろやかさ。ムスクがそれを包んで、清潔な肌のような温もりに変える。官能的、という言葉がちょうどはまる領域だ。

翌朝、枕にほのかに残っていることもある。けれど、ここで正直に書いておきたい。Eclaireは持続性に賛否がある。立ち上がりの華やかさを思うと、肌の上での寿命はやや短めに感じる人が少なくない。香りが好きで一日まとわせたいなら、こまめな付け直しを覚悟しておいたほうがいい。そこが惜しい。

誰に似合い、誰には向かないか

向くのは、甘い香りを臆さず楽しめる人。秋冬の夜、デート、あるいは少し気分を上げたい普段使いに。冷たい空気のなかでこそ、このキャラメルは本領を出す。色気と温かみを同時に欲しい人には、値段以上の満足があるはずだ。

逆に、甘さが得意でない人、オフィスで無臭に近い清潔感を求める人には重い。夏の高温多湿のなかでは、甘さがくどく感じられることもある。フローラルやシトラスの軽さを探している人は、最初から別の方向を見たほうがいい。要するに、好みがはっきり分かれる一本だ。

日本での入手

国内正規取扱いは今のところ確認できていない。Amazon.co.jpや楽天の並行輸入で手に入るのが現状だ。TikTokで話題になり、よく比較されるBianco Latteを連想して探す人も多い。試香できる場所が限られるのが難点なので、甘い香りに慣れていないなら、まず自分の好みの輪郭を掴んでおくと失敗が減る。香水診断で、自分が甘さのどのあたりまで踏み込めるかを測ってみるのもいい。

焦げかけたキャラメルと、ラテの湯気。冬の夜にそっと寄り添う甘さを探しているなら、6,000円で試す価値は、たしかにある。