Jean Lowe Nouveau|夜から朝へ、残り火のように
Maison Alhambraのジャン・ロウ ヌーヴォーを、夕方の一吹きから翌朝の残り香まで追ったレビュー。甘くスモーキーなウッディ・レザーの移ろいと、向く人・向かない人を正直に書いた。
夕方、出かける前の手首に一吹き。最初の数分で、これはおとなしく一日を終わらせる香りではないとわかる。Jean Lowe Nouveauは、ウードとカカオで幕を開ける。薬っぽく乾いた木の匂いと、少し焦げたチョコレートのような甘さ。相反するものが握手している、妙な緊張感がある。
18時、立ち上がり
つけてすぐは、正直言って重い。ウードのくせと、カカオの濃さが真正面からぶつかってくる。慣れていない人なら、ここで「失敗したかもしれない」と思うかもしれない。でも待ってほしい。この香りは最初の15分で判断するものではない。
EDPという濃度の通り、拡散力はしっかりある。狭い室内で何プッシュもすれば、周りが振り返る。デートで使うなら、相手との距離を考えて一吹き、多くて二吹き。それ以上は押しつけになる。秋冬の夜、コートの襟元あたりに忍ばせるくらいがちょうどいい。
21時、香りが落ち着く頃
食事を終えて、席を立つ頃。トップの刺々しさが引いて、中盤の表情が出てくる。パチョリの土っぽさ、サフランのかすかな金属的なスパイス、そこにローズとキャラメルが絡む。甘さが角を取られて、大人びた丸みに変わっていく。
この移り変わりが、この香りのいちばんの見せ場だと思う。重いだけの甘さではなく、花の気配とスパイスが奥行きを作る。暗がりで蝋燭を灯したような、ほの暗い色気。ダークでミステリアスな一面を好む人なら、ここでようやく腑に落ちるはずだ。
24時、残り火の時間
家に帰って、シャワーの前。服を脱ぐときに、ベースのインセンスとレザーが立ちのぼる。お香の煙と、なめした革。そこにブラックカラントのわずかな酸味が差し込んで、甘さが完全に沈黙するわけではない。焚き火が消えたあとの、炭の残り火のような匂い。
このベースは強い。そして長い。翌朝、枕やシャツにまだ香りが残っていることがある。良くも悪くも、記憶に残るタイプ。軽やかに香って消えるものを探している人には、まったく向かない。
翌朝、シャツに残るもの
起きて、昨日着ていたシャツを手に取ると、まだレザーとお香の余韻がある。ここまで残るのかと、少し呆れるくらい。残香の強さは美点でもあり、弱点でもある。オフィスのような閉じた空間、満員電車、フォーマルでも軽さが求められる昼の場面には、この濃厚さは重すぎる。
向くのは、秋冬の夜。パーティーやデート、あるいは一人で過ごす静かな晩に、自分のためだけに纏う一本としても悪くない。メンズ寄りの香調だが、販売上はユニセックス表記も多い。甘さとスモーキーさの共存を楽しめる人なら、性別はあまり関係ない。
価格と、手に入れること
参考価格は約7,000円。この価格でこの濃度と持続を出してくるあたり、Maison Alhambraらしい。ルイ・ヴィトンの「ヌーヴォー モンド」のクローンとして海外で知られる一本だが、クローンかどうかより、単体で見てきちんと一つの世界を作っているかが大事だと思う。その点、これは作れている。
難点は入手性だ。国内の正規取扱いは確認できず、手に入れるなら海外通販や個人輸入が中心になる。日本語のレビューも乏しいので、届くまで実物の想像がつきにくい。円価格はあくまで推定で、送料や為替で前後する。
万人向けではない。最初の重さに耐えられるか、残香の長さを許せるか。そこを超えた人にだけ、夜の底で静かに燃える色気が残る。自分の輪郭をどんな香りで描きたいか迷ったら、香水診断で手探りしてみてもいい。