Ramz Lattafa Gold|金の名を持つ果実
4,000円で買える金色のフルーティーローズ。りんごとローズが主役の甘やかな一本を、時間の流れと向き不向きから正直に眺める。
4,000円ほどで買える香水に、どこまで期待していいのか。LattafaのRamz Lattafa (Gold)を前にすると、まずその問いが立つ。金の帯を巻いたボトルは、値段の三倍くらい高く見える。そういう嘘のつき方が、このブランドは上手い。
そもそも、どんな香りなのか
ひとことで言えば、果実とローズの甘やかなフルーティーローズ。ユニセックスと書いてあるが、体感はフェミニン寄りだ。
栓を抜くと、りんごと洋梨がまず立ち上がる。ピーチとスウィートオレンジ、それにカシス(ブラックカラント)の少し尖った酸が混じって、みずみずしいというより、蜜を含んだ果物の断面のような立ち上がり。甘い。けれど、べたつく手前で踏みとどまっている。
やがてジャスミン・サンバックとローズ、オレンジブロッサムが開いてくる。ここが主役だ。果実の甘さがそのまま花の華やぎに滑り込む。土台にはサンダルウッド、ホワイトムスク、パチュリ、バニラ。甘く、少し埃っぽく、温かい。全体として、金という名前に妙に納得する色味の香りだ。
時間で、どう変わっていくのか
最初の30分は果実のショー。りんごとピーチが前に出て、これはもう完全に甘い香りだと身構える。
だが1時間もすると、花が果実を追い抜く。ローズとジャスミンが前景に出て、香り全体が少し大人びる。果実は消えるのではなく、花の背後で色づけ役に回る。この移り変わりが、この香水のいちばん気持ちのいいところだと思う。
2〜3時間後にはバニラとムスクの甘い残り香に落ち着く。肌に寄り添う、温かくて眠たいような香り。持続はおよそ5〜6時間。安香水にありがちな「昼過ぎには消えている」ということはないが、翌朝まで残る類でもない。夜の数時間を連れ添う、そのくらいの体力だ。
強さと、どこでつけるか
拡散はほどほど。爆発的に飛ぶタイプではなく、半径一メートルくらいで甘く香る。だから満員電車のような密な場所でも、そこまで迷惑にはなりにくい。
ただし甘さは強いので、真夏の昼にこれをまとうと、少し暑苦しい。似合うのは秋冬の夜だ。冷えた空気の中でこそ、果実とバニラの温度が生きる。デート、少し華やかにしたい食事、夜のパーティー。装いに一枚、金色の膜をかけたい日。そういう場面のための一本だと言っていい。
誰に向いて、誰に向かないのか
甘いフルーティーフローラルが好きな人には、値段を考えればよくできた選択肢だと思う。海外ではXerjoffのアレキサンドリアⅡのクローンとして語られることが多いが、実際はモンターレ寄りだという声もあって、そのあたりは元ネタ探しの遊びとして楽しめばいい。少なくとも単体で成立している香りだ。
逆に、向かない人もはっきりしている。石けんのように清潔で軽い香りを求める人。ビジネスの場で無難に済ませたい人。甘さそのものが苦手な人。そういう相手には、この金色は少し押しが強すぎる。「万人に」とは口が裂けても言えない。エレガントで、少し色気のある、はっきり主張する甘さだ。
日本での入手は、いまのところ主に並行輸入に頼ることになる。国内正規流通は確認できていない。だから在庫と価格は店によってばらつくが、4,000円前後で見つかれば、まず外れではない。Lattafaというブランドの、良い意味での図々しさが詰まった一本だから。
金の帯を巻いた小瓶を手首に一滴。冬の夜、コートを脱いだときにふわりと立つ果実とローズ。値段のことは、その瞬間だけ忘れていられる。