レビュー

BORNTOSTANDOUT Nuts|屋台のキャラメルが立ちのぼる冬

ピスタチオとアーモンドから始まり、キャラメルとバニラへ沈んでいく韓国発のグルマン。温かみと弱点、日本での入手までを、着けた冬の情景とともに。

十二月の週末。夕方五時、もう外は藍色で、コートの襟を立てて路地を歩く。手首にひと吹きしただけのはずが、マフラーの隙間から、香ばしいものが立ちのぼってくる。ローストしたナッツ。焦がした砂糖。誰かが屋台で紙袋にキャラメルナッツを詰めている、あの湯気の匂い。それが自分の体温で温められて、ゆっくり広がっていく。

BORNTOSTANDOUTのNutsは、そういう香りだ。名前のまま、だが名前より奥行きがある。

最初のひと吹きは、殻を割ったばかりのピスタチオ

トップはピスタチオとアーモンド。青くて、少し油っぽくて、シャープ。ここだけ嗅ぐと「甘くないのか」と思うくらい、ナッツの生々しさが前に出る。砕いたばかりの殻のエッジ。この立ち上がりが、Nutsを安っぽいお菓子の香りから引き離している。

だから一瞬「意外と辛口だな」と感じるかもしれない。慌てて評価を下さないでほしい。この香りは、時間をかけて表情を変えていくタイプだ。

三十分後、砂糖が焦げて、ラムが混じる

ミドルに入ると、ハニーとキャラメルが染み出してくる。ラムの酒っぽい甘さ、ダバナの少しフルーティで発酵したようなニュアンス。ここでようやく「グルマン」——食べ物を思わせる甘い香調——の本領が出てくる。

ただ、砂糖菓子のようにベタつかない。キャラメリゼ、つまり砂糖を火で焦がした、ほろ苦さのある甘さ。ラムがその輪郭を締めているから、甘ったるさの手前で踏みとどまる。ここがこの香水のいちばん美味しい時間帯だと思う。

数時間後、ベースに沈むと大人になる

ベースはバニラ、ブラックセサミ抽出物、グアイアックウッド、タバコ、トンカ。ブラックセサミ——黒ごまだ——が土台に入っているのが面白い。香ばしさに、焙じたような深みが加わる。グアイアックウッドとタバコが乾いた木と煙の陰影を落として、甘さが下に沈んでいく。

肌に近いところで、温かくて、少し埃っぽくて、落ち着いた残り香になる。お菓子から始まって、最後は暖炉の前の木のような場所に着地する。この移り変わりが、Nutsを着ける楽しみだ。

強さと使いどころ、そして向かない人

拡散はほどほど。爆発的に飛ぶタイプではなく、体温にまとわりつくように香る。だから冬や秋の、コートやニットの中で温められる季節がいちばん映える。逆に、夏の炎天下でこの香ばしさと甘さを浴びると、少し重く感じるはずだ。真夏には正直、向かない。

用途はデートやデイリー。オフィスでも、つけすぎなければ悪目立ちしない。ただ「食べ物っぽい甘い香りが苦手」な人は、素直に避けたほうがいい。ナッツとキャラメルという主張は最後まで消えないから、無理に好きになる必要はない。グルマンが体質に合う人にとっては、たまらない一本だろうが。

日本での入手

韓国発のヴィーガンニッチで、TikTok経由で名前が広がった。日本では2023年7月にRESTIRで発売され、いまはBEAMSでも扱いがある。phaetonで50mLが約33,000円。並行輸入ならBUYMAで50mL約26,000円あたりが目安になる。決して安くはない。だが香りの構築の丁寧さを思えば、法外でもない。

店頭で試せる機会が増えてきたので、買う前に一度、自分の肌で三時間の移り変わりを確かめてほしい。ムエ——試香紙——の上と、肌の上では、この香水はまるで別物に育つ。ブランドの他の顔ぶれはBORNTOSTANDOUTのページから辿れる。

紙袋のキャラメルナッツを買って、手が温かいまま帰る夜。そういう記憶を持っている人に、この香りはよく似合う。もし自分に合うグルマンがまだ見つかっていないなら、香水診断から探してみるのも悪くない。