香水村 Kousui Mura
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レビュー

Amouage Reflection Man|夕方から翌朝までの白い花

オマーンの名作、Reflection Man EDPを時間の流れとともに追う。冷たいローズマリーから白い花、そしてウッディな余韻へ。弱点にも正直に触れた単体レビュー。

香水を夕方につけて、翌朝までそばに置いてみる。そうすると、その一本がどんな性格をしているのかよくわかる。騒がしいだけの香りは夜のうちに疲れてしまうし、本当に洗練されたものは、時間が経つほど静かに深くなる。

Amouage の Reflection Manは、後者だ。長年 masterpiece と呼ばれてきた理由を、一晩かけて確かめる。

18時。冷たいローズマリーで始まる

つけた瞬間、ローズマリーとピンクペッパーが立ち上がる。ハーブの冷たさに、胡椒のちくちくした明るさ。ビターオレンジの葉やプチグレンが、青い苦味を添える。

夏の夕方、まだ日が落ちきらない時間帯。シャワーを浴びたあとの、水気の残った肌にこの出だしは似合う。甘くない。むしろ硬質で、きちんとアイロンのかかったシャツのような緊張感がある。

この最初の数十分だけを嗅いで「爽やかなシトラス系」と早合点すると、あとで裏切られる。これはただのフレッシュな香りではない。

20時。白い花が咲く

食事を終えるころ、香りの中心が移る。ネロリ、ジャスミン、イランイラン。白い花が次々と開いていく。

派手ではない。むしろ、ネロリの清潔な苦味が花の甘さを抑えて、あくまで上品に咲かせている。そこへオリスルート——アイリスの根からとるパウダリーな素材が入ってきて、肌の表面に薄い白粉をはたいたような質感になる。

この段階が、Reflection Man のいちばん美しいところだと思う。花なのに男くさい、という矛盾を涼しい顔でやってのける。デートにも、きちんとした仕事の場にも使えるのは、この花が決して媚びないからだ。EDP、オイル濃度25%の密度がありながら、重たく感じさせない。

24時。ウッディな余韻に落ち着く

日付が変わるころ、花は少しずつ鎮まり、ベースのウッディが前に出てくる。サンダルウッドのクリーミーさ、バージニアシダーの乾いた鉛筆のような香り、ベチバーの土っぽさ、パチュリの深み。

この移ろいが、驚くほど滑らかだ。段差がない。トップからベースまで、一本の線で繋がっているように感じる。安い香水だと、トップが消えた瞬間に別の香りに変わってしまうことがあるが、これはそうならない。

照明を落とした部屋で、手首に鼻を寄せる。昼間の清潔な花の記憶を残したまま、木とベチバーが静かに灯っている。騒がしさは、もうどこにもない。

翌朝。まだ、いる

朝、枕元でかすかに香りが残っている。だいぶ薄くなってはいるが、ベチバーとサンダルウッドの輪郭はまだ消えていない。一晩を越えて、ちゃんと生き延びている。

持続はしっかりしている方だ。ただし、拡散——いわゆる香りの飛び方は、爆発的ではない。腕を伸ばした人に届くというより、近づいた人がふと気づく距離感。これを長所と取るか物足りないと取るかで、評価は分かれる。

向く人、向かない人

向くのは、清潔で端正な香りを静かにまといたい人。フォーマルやオフィス、大人のデート。春から秋、とくに湿度のある季節にこの白い花はよく映える。Amouage というブランドが持つ、過剰なまでの作り込みを好む人にも。

逆に、甘いグルマンや、周囲を巻き込むような強い香りを求める人には物足りないかもしれない。そして、オリスのパウダリーな質感は、好き嫌いがはっきり出る。石鹸的と感じる人もいれば、古風な化粧品のようだと身構える人もいる。白い花が得意でない人は、慎重に試した方がいい。

価格は参考で約49,000円。決して手軽ではない。国内正規の店頭展開は限定的で、専門店や Yahoo!ショッピング、BUYMA の並行輸入が主な入手経路になる。試香の機会は多くないから、できれば少量から始めたいところだ。

一晩付き合って思うのは、これは主張して覚えさせる香りではなく、気づけばそこにいる香りだということ。派手さを捨てた代わりに、品を手に入れた一本。自分に合う香りの輪郭がまだ掴めないなら、香水診断で出発点を探すのもいい。